気候変動は地球の温暖化によって起きていると言われています。そして、その地球温暖化は、温室効果ガスの影響によるものだということも広く知られているところです。
そこで気になるのは、温室効果ガスにはフロンや、メタンなど他のガスもあるのに、なぜ二酸化炭素(CO2)ばかりが削減対象になっているのかということ。本稿では、そんな素朴な疑問を持つ人のために、地球温暖化対策でなぜCO2だけが削減目標の対象となるのか、その理由について解説します。
熱を溜め込むのが温室効果ガス
地球には、生物が生存するのに適した環境を維持する自然のシステムがあります。気温が一定の範囲内で維持されているのも、地球に降り注いだ太陽熱が地球に留まることなく、宇宙空間に放射されるからです。もしも太陽熱を地球が溜め込んでしまったら、地球の温度は上がり続けてしまいます。
こうした自然の放熱システムが備わっているにもかかわらず、地球の平均気温が急激に上がっているのは、人為的な活動によって自然システムのバランスが崩れてしまったからです。その最大の原因が温室効果ガスにあると言われています。
温室効果ガスとは、熱を溜め込む性質を持つガスの総称です。
産業革命以後、人間の経済活動によって、CO2やフロン、メタンなどの温室効果ガスが、大量に大気中に排出されてきました。
現在、大気に含まれるCO2は、人類が誕生して以来、最高濃度に達していると言われています。
CO2は温室効果ガスの中で圧倒的に発生量が多い
そこで疑問に思ってしまうのは、温室効果ガスには何種類もあるのに、CO2だけが削減目標になっているのはなぜなのかということです。
熱を溜め込む能力だけで言えば、CO2は他のガスと比べてかなり低いのです。二酸化炭素を1とすると、メタンは26、フロンは数千から1万を超えます。(参照:温室効果ガスの特徴〈全国地球温暖化防止活動推進センター〉)
にもかかわらずCO2だけが削減の対象になっている理由は、CO2の発生量が他に比べて圧倒的に多いからにほかなりません。
石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が使われている影響で、CO2は他よりも圧倒的に多く排出されているのです。(参照:温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量〈全国地球温暖化防止活動推進センター〉)
2013年にはじめて温暖化とCO2の関係が明らかに
CO2が地球温暖化の原因であることが判明したのは、つい最近のことです。それまでは単なる仮説とされていました。
温暖化の原因が二酸化炭素(CO2)にあるという説が浮上したのは、21世紀に入ってからです。しかし確実なデータが示されなかったために、ずっと仮説として扱われていたのです。
ところが2013年に、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した「第5次評価報告書」のデータによって、CO2の累積排出量と世界平均気温の上昇とはほぼ正比例することが明らかにされました。それ以後、温暖化対策=CO2削減という構図が世界共通の認識となり、一斉に「脱炭素」へと走りはじめたのです。
じつをいうと過去には、今のCO2のように“やっかいもの”扱いされていたガスがありました。それがフロンガスです。フロンとはエアコンの冷却用ガスや各種スプレー製品などに使用されていて、20世紀の半ば過ぎまでは、人の生活に欠かせないものでした。
しかし20世紀の後半になってから、フロンによるオゾン層の破壊が世界で問題となり、「脱フロン」の運動が世界中で展開されたのです。その後、代替フロンが開発されたことで、1990年代以降、フロンガスは激減しました。
しかし近年になって、代替フロンにも温室効果があることが指摘され、さらなる改良が進められているところです。
注目されるネガティブ・エミッション技術の開発
世界中がCO2削減に取り組む中、今、注目されているのが、「ネガティブ・エミッション」と呼ばれる、CO2を隔離、除去する技術です。
現在、「海洋アルカリ化」「大規模植林」「岩石による風化促進」「土壌炭素貯留」「海洋肥沃(ブルーカーボン)」といった手法と技術が、世界の研究機関で研究されており、関連業種の企業もその研究と開発に参入しています。
地球の歴史がはじまって以来、CO2は植物が光合成によって自然に吸収されるものでした。しかし自然の働きではまったく追い付かないほど大量のCO2が、人間によって排出されてしまったため、森の働きでは足りない部分を人間の技術で補いつつ、CO2排出量をミニマムにしていく取り組みが進んでいるのです。
文・構成/ 大島七々三