いよいよ日本でも二酸化炭素(CO2)排出量の取引市場がスタートしました。国を挙げて脱炭素に取り組む中、CO2に価格がつくカーボンプライシングは定着するのでしょうか。
CO2排出量が金額に転換する社会の到来
今年9月下旬、東京証券取引所で二酸化炭素(CO2)排出量を取引する国内初の「カーボン・クレジット市場」の実証実験がスタートしました。
(参照:NIKKEI GX「東証炭素クレジット市場、手探りの1週間 約定少なく」)
キャップアンドトレード制度など、これまでにも二酸化炭素排出量を取引する仕組みはありましたが、多くの人にとっては実感のないものでした。しかし取引市場が生まれ、CO2に「1トンあたり4,000円」などと値段がつくと話は変わってきます。
これまでにもCO2排出量取引は行われていたものの、基本的には1対1での交渉による取引であり、価格もオープンにはされていません、しかしクレジット市場が生まれ、これからはCO2も株と同じように、価格と数量で売買されることになります。企業にとってCO2削減の効果が見えやすくなりました。
まだスタートした直後で参加者が少ないうえに、相場観もなく、約定は成立しづらい状況のようですが。二酸化炭素(CO2)の排出削減目標を持つ大手企業にとって、「カーボン・クレジット市場」への期待は大きいはず。長い目で見れば、取引は次第に加速していくものと思われます。
取引されるのは「J‐クレジット」
市場で取引されるのは「J-クレジット」というもの。J-クレジットとは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証するものです。(参照:「J-クレジット制度」)
厳しいCO2削減目標を設定している企業にとって今回の取引市場は頼みの綱ともなり、将来的には取引が活発化することが予想されます。同時に企業が再生可能エネルギー設備や森林の管理などGX(グリーントランスフォーメーション)を積極的に進めていくきっかけになりそうです。
今はまだ国内だけの閉じられた市場取引のため影響力は限定的ですが、いずれは国際市場へのアクセスが検討されるでしょう。その時には国際取引上のルールや評価基準などの国際標準の導入など検討課題も出てくることになることが予想されます。
今回の「カーボン・クレジット市場」開設は、日本が脱炭素で先行するEUと歩調を合わせていく上での最初の一歩と言えそうです。