肉魚を食べず、野菜などを好んで食べる菜食主義“ベジタリアン”や、肉魚に限らず、動物性の食品(肉、魚、卵、乳製品、蜂蜜など)を全く摂らない完全菜食主義“ヴィーガン”などの食事スタイルは、健康・環境面から注目されています。
フィンランドでは、ヴィーガンの人は人口の3%ほどと特別に多いわけではありませんが、ヴィーガンフレンドリーな国だと言われています。例えば、街中では簡単にヴィーガンオプションを見つけることができたり、学校の給食や大学の学食では毎日ヴィーガンメニューが提供されていたりします。
(参照:10 Reasons Finland Is The Most Vegan-Friendly Country In The World, Simply Healthy Vegan )
フィンランドのスーパーに並ぶ豊富な代替食品
フィンランドのスーパーマーケットに行くと、ヴィーガン・ベジタリアンの方向けに植物性の食品が置かれている”vege”コーナーが必ずあり、品揃えはとても豊富です。
下の写真は、左上にVEGEと書いてあるように、代替肉のコーナーです。
日本では見られないさまざまな代替肉の商品が売られています。
また、ヴィーガンチーズ(牛乳を使わないチーズ)の種類も豊富です。下の写真はヴィーガンチーズのコーナーの様子です。ヴィーガンゴーダチーズ、ヴィーガンモッツァレラ、ヴィーガンクリームチーズなどさまざまなヴィーガンチーズが売られています。
ちなみにですが、日本人からすると“欧米の国々”はヴィーガン・ベジタリアンの浸透が進んでいるというイメージが強いかと思いますが、同じヨーロッパでも国によって様子は異なります。
下の写真は、私が2023年10月下旬に旅行に行ったポーランドのスーパーのチーズ売り場の様子です。
1枚の写真では収めきれないくらい多くのチーズが並んでいましたが、ヴィーガン対応のチーズは2枚目の写真の、白四角で囲んでいる2つだけでした。
フィンランドの代表的な総合小売業2社のうちの1つのsグループ(日本でいうAEONのような存在で、フィンランドの代表的なスーパーマーケットS marketやPrisma、Alepaを展開しています)は、“2030年までに、販売する食品の少なくとも65%をプラントベースにする”と具体的な数値目標を挙げています。
これほど具体的な数値目標を立て、積極的にプラントベース食の普及に取り組んでいる姿勢は目を見張るものがありますね。
フィンランドのスーパーで“植物性代替〇〇”を買って試してみた!
私が今回買ってみたヴィーガン用代替〇〇は、①代替ハム、②代替ソーセージ、③代替ゴーダチーズの3種類です。
①代替ハム
まず試してみたのは、Bon Veganというエストニア(フィンランドからフェリーで2時間ほどと、とても近く、文化的・政治的にも関係が深く、兄弟関係にあるとも言われています。)の会社が販売しているヴィーガンハムです。大豆タンパクと小麦タンパクを主原料として作られたものです。
高たんぱくで、動物性のお肉に比べて“飽和脂肪酸”が少ないとのこと。値段は100gで 2.40€(約384円)と、フィンランドで売られている一般的なハムに比べると2倍ほどの値段です。
実際に食べてみると、“お肉らしさ”は普通の“お肉”に比べると劣りますが、“これはこれで美味しい”という印象です。フライパンであぶってから食べると、香ばしさ・ジューシーさが増し、より美味しくなりました!
(参照:Bon Vegan)
②代替ソーセージ
次に試したのは、Vönerというフィンランドの会社が販売している代替ソーセージです。小麦プロテインを主原料として代替肉が作られており、ソーセージやバーガーのパティ、ケバブなど、様々なバージョンで販売されています。
フィンランド人の友達とハロウィンパーティーを開く際に、友達の一人がベジタリアンだったため、ヴィーガンソーセージを使ったソーセージパイを用意しました。このようなことはフィンランドでホームパーティーを開く際はよくあり、私がホストになる場合は必ず友達の食事制限やアレルギーを聞き、ヴィーガン/ベジタリアン対応をするよう心がけています。
食べてみると、代替肉によくある変な臭みなどは全くなく、言われなければヴィーガンソーセージとは全く気づかないくらい普通に美味しいソーセージでした。『実はこれヴィーガンソーセージだよ』と友達に話すと彼らもとても驚いていました!
5本入り(200g)で5.15€(約920円)と、一般的なフィンランドで売られているソーセージの5倍ほどのお値段にはなりますが、そのクオリティは確かなものでした。
③代替ゴーダチーズ
今回試した代替チーズは、Valioというフィンランドの会社が販売しているODDLY-GOOD(訳:びっくりするほど美味しい)というシリーズのヴィーガンゴーダチーズです。小麦タンパク、ジャガイモタンパクを中心に作られ、ニュートリショナルイーストによって、チーズ特有の風味も加えられています。
200g 2.59€(1kg: 12.95€)で売られていました(参照:Oddlygood GOUDA)。フィンランドで売られている一般的なゴーダスライスチーズは、1kg 11.63€ほどなので、ヴィーガンミートに比べると、値段の差は小さいです。
実際に食べてみると、“ヴィーガンチーズ”特有の独特な風味を感じます。食感も、生で食べるとぽろぽろと崩れていき、乳製品のスライスチーズのようななめらかさはありません。とはいえ、あたためると普通のチーズのように溶けるなど、ヴィーガンチーズとしてのクオリティはかなり高いほうかと思われます。普通のチーズとあまり値段が変わらず、チーズを食べているような体験ができるという点で、ヴィーガンの方には嬉しいオプションではないでしょうか。
(参考:Oddlygood)
絶品ヴィーガンドーナツが楽しめるカフェ~Round Cafe&Arnolds~
ヘルシンキに住んでいる私がおすすめしたいヴィーガンドーナツカフェは、Round Cafeです。ヘルシンキ市内に4店舗構えていて、ヴィーガンドーナツとヴィーガンベーグルが楽しめます。
下図の左側は、ピスタチオ×ラズベリー味のヴィーガンドーナツです。ヴィーガンスイーツにありがちな物足りなさは全くなく、とてもふわふわで、ほどよい甘さで絶品のヴィーガンドーナツです!お値段は1つ4.9€(約900円)とかなり高いですが、フィンランドの物価と円安を考えると、一般的なお値段かと思われます。
右側はヴィーガンベーグルサンドです。中には大豆をベースとしたソイチキン、マヨネーズ、チリソースなどが挟んであります。ただ、やはりチキンの味や食感を再現するのはまだ難しいらしく、大豆っぽさや人工的な風味が残っている印象です。チリソースやマヨネーズの風味によって味が整えられています。こちらは約9€(約1500円)とかなりお高めです。
もしヘルシンキにお越しになり、Round Cafeを訪れる際はドーナツをお試しになることをおすすめします!
また、日本にも年に何度か各地で催事出展しているArnoldsも、実はフィンランド発祥のヴィーガンドーナツ店です。1991年にヘルシンキに第一号店舗がオープンし、それから約30年間、国民的なドーナツショップとして親しまれています。日本で言うミスタードーナツのような存在でしょうか。
牛乳や卵はもちろん使用せず、独自の製法によつてふわふわもちもち食感のドーナツに仕上げています。
思っているより幅広いヴィーガン食品を試す機会
記事の冒頭でご紹介したようにフィンランドではかなり豊富なヴィーガン食品がスーパーマーケットで手に入るほか、ヴィーガンレストランや、一般のレストランでのヴィーガンオプションも多く、ヴィーガン食品を試す機会が多くあります。
日本でも最近さまざまな代替肉や代替チーズが登場してきていますよね!ぜひ一度手に取ってトライしてみてはいかがでしょうか?ヴィーガン食品へのイメージが変わるかもしれません!
ちなみに11月1日(水)は”World Vegan Day”ということで、ヘルシンキ大学の学食でもそれに沿って、普段よりも多くのヴィーガンメニューを提供する取り組みが行われていました。
学食のメニューが毎日表示されるアプリにて、”Today we take part in World Vegan Day”(今日は世界ヴィーガンデーに参画します)という一言が表示され、普段よりも高い割合でヴィーガンメニュー(VVという文字が右に書かれているもの)が提供されています。通常はサラダとヴィーガンのメインメニュー1種類だけ提供されることが多いですが、この日には2種類のヴィーガンメニューとサラダが提供されています。(下図)
日本でもこういった積極的な取り組みがより盛んになっていくといいですね!
文・構成・写真/SD学生編集部(M.M 在フィンランド)