日本は国土の3分の2(約2500万ha)が森林という、世界有数の森林国です。2020年時点では、OECD加盟国の中で森林率は、フィンランド、スウェーデンに次ぎ、日本が3位と報告されています。また、森林蓄積(森林を構成する樹木の体積:森林資源の目安)は人工林を中心に毎年約6000万㎥増加し、2017年の時点で既に約54億㎥にも及んでいます。一方で、面積ベースでは、人工林の半分が50年生を越えて成熟しており、利用期を迎えています。この豊富な資源をいかに有効活用していくか、国産木材の活用のあり方が今日本の林業界で問われています。
(参考:「森林・林業・木材産業の現状と課題」林野庁)
日本の木とともに、日本の暮らしをもっと豊かに~株式会社konoki~
日本では、人工林の森林蓄積はこの50年間で増加し続けている一方で、木が十分に使われていなかったり、木造建築の減少や新資源の台頭によって木材利用が減少していたり、急速な都市化により人々の自然離れが進んでいたり、様々な問題が露出し始めています。そんな現状に対して、株式会社konokiは『自分たちが率先して日本の木の魅力を届けて、つくる人も、使う人も、自然環境も豊かにしたい』という想いから2021年に設立されました。
株式会社konokiの事業は①木を軸としたブランド(ウッドライフスタイルブランド)の運営、➁木を活用したプロデュース事業の2つの分野があり、後者では、木を活用した商品の企画開発や、コンサルティングが行われています。
設立から未だ2年も経っていませんが、既に多種多様な業界とコラボレーションを行い、木の需要創出に挑んでおり、他領域での木の拡張性・可能性を示しています。
例えば、『木×お酒』をテーマに、”おうちで樽熟成”が手軽にでき、自分だけのこだわりの一杯のお酒を楽しめる、国産木材製のミニ樽を販売したり、『木×サウナ』をテーマに、日本の樹木の間伐材を蒸留し作り上げたサウナ用ロウリュ水を販売したり、持続可能な森づくりを目指して、木の新しい活かし方を提案しています。(どちらも購入型クラウドファンディングの形で販売されました。)
株式会社konokiの商品は、人と自然が共生する、もっと豊かで明るい社会への第一歩になってくれるのではないでしょうか。
事業を通じて”林業を持続可能に”し、”森の未来”をつくる株式会社森未来
『林業を稼げる産業にする=森の未来をつくる』という意味が社名に込められた、株式会社森未来は、森林・林業・木材のあらゆる情報をテクノロジーの力で集約し、未来を変革する木材流通をつくることをビジョンとし、2016年に設立されました。
株式会社森未来の代表的なサービスの一つが『eTREE』です。
今までは、日本全国の木材情報をまとめたプラットフォームはなく、デザイナーや施工業者は木材を使いたい場合、直接製材所に問い合わせをしなければいけませんでした。木材情報は日本全国に点在しており、適正な価格や納期も不透明。そんな状態では国産木材の利用も進みません。そんな状況を解決するべく、膨大な商品の中から必要な木材を容易に探せるよう、日本全国の木材情報を集約したオンラインプラットフォーム・検索システム『eTREE』が2021年に開設されました。
eTREEは、森林・木材・林業のあらゆる情報を集約し、従来の木材流通の透明化、需要者と供給者の直接のマッチング、適正価格での木材購入の容易化を可能にする、オンラインプラットフォームです。eTREEを使うことで、木材の情報をより手軽に・正しく把握し、木材をより容易に適正な価格で手に入れることができるようになります。木材購入のハードルが下がり、国産木材の利用が促進され、日本の林業の持続可能性が高まることが期待されています。
また、eTREEでは、FSC認証(※)の木材情報も集約しています。もともと、森林環境や地域社会に配慮してつくられた木材・製品につけられるFSC認証が進んでいない上、FSC認証木材に関する情報もまとまっていなかったため、利用が停滞していました。しかし、昨今のSDGsの認知の高まりや、国産材、サステナブル・エシカルな材の需要の高まりを受け、株式会社森未来はこのプラットフォームを立ち上げ、FSC認証木材の認知向上およびサステナブルな木材利用の促進を目指しています。(参照:株式会社森未来プレスリリース 2022年3月15日)
林業従事者の高齢化、国産木材の利用不足、日本の林業には様々な問題が存在しています。株式会社森未来はこれらをデジタルデータの力で解決し、明るい森の未来を描いてくれるでしょう。
※FSC認証:FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)は責任ある森林管理を世界に普及させる事を目的に設立された国際的な非営利団体。環境保全の点から見て適切で、社会的な利益に適い、経済も継続可能な、責任ある管理をされた森林や、林産物の席になる調達に対して与えられるFSC。消費者はFSC認証のマークが入った製品を買うことで、世界の森林保全を応援できる仕組み。(参考:「森を守るマーク 森林認証制度FSC®について」(WWFジャパン))
日本の木を大切に
植林・間伐のサイクルで丁寧に管理され、つくられる日本の国産木材は高品質で見た目・香り・肌触りも世界に誇れる逸材です。そして、日本の誇りたる国産材を積極的に使えば、日本の林業の促進・森林の保護・森林地域社会の持続可能性の向上など、様々なメリットがあります。森林が保護され、適切に管理されれば、土砂災害・水害の防止や、二酸化炭素吸収など、森林のもつ多面的機能も維持・発揮でき、私たちの暮らしもより安心・安全になるでしょう。これからの暮らしをより明るく豊かなものにするためにも、日本の大切な資源である国産木材に目を向けてみませんか?
文・構成/SD学生編集部(M.M)