大豆ミートの植物肉を使ったハンバーガーなど、プラントベースフードを見かける機会も増えてきました。健康に良い、地球環境にやさしいとは言うものの、やっぱり肉と比べると「なんか物足りない」「おいしくない」などの声もあるようです。そのプラントベースフード全般に共通する「物足りなさ」を克服しようとしている会社が、植物性油脂や業務用チョコレートで有名な不二製油株式会社です。今回、その研究所を訪問し、新開発の「ダシ」(MIRA-Dashi®)を使って調理した料理を試食してきました。
植物性ダシ製品 MIRA-Dashi® とは?
不二製油が大豆タンパクと植物性油脂を組み合わせて開発した「植物のちからで、動物性ならではのおいしさや満足感を実現する」技術ブランドMIRACORE®(ミラコア)。この技術を活用し、世界中の料理に不可欠な「ダシ」が持つ「満足感」に注目して開発したのが植物性ダシ製品「MIRA-Dashi®」です。現在、下図のようなラインナップがあるそうです。
このMIRA-Dashi®を使うと、満足感のあるうどんやラーメンが作れると聞き、さっそく試食して確かめてみました。
プラントベースうどん
最初の試食は「うどん」です。見た目は普通のうどんですね。味は… おいしい普通の関西風うどん、です。「きつね」の油揚げも味がしっかり染みていておいしいです。
通常の試食なら、どのようにおいしいかをお伝えするのですが、今回は食レポではなくて、プラントベースフードの話なので、その材料などについてお聞きしました。
うどんの出汁(ダシ)といえば、カツオ節や煮干し、昆布からとったダシが一般的かと思いますが、このダシは、動物性材料を使わない植物性だそうです。正直な感想としては、違いが分からない…。お店で何も言わずに出されたら、普通のうどんと思ってしまいますね。
今回試食したうどんには、MIRA-Dashi® C400というカツオ出汁風の魚介ダシタイプを使っているとのこと。動物性原料、魚介も使わない植物性のカツオ出汁を使った通常のうどんを再現しています。
プラントベースとんこつラーメン&みそラーメン
続いては、ラーメンです。豚骨(風)ラーメンと味噌ラーメンの2種類。試食の割には、けっこうガッツリしてますね(笑)
見た目でも分かりますが、インスタントラーメンではなく、お店で出されるような本格的なラーメンを作っていただいています。
まず、とんこつラーメン(正確にはとんこつではありませんが、とんこつと表記します)の試食から。スープを一口飲むと、これまたラーメン屋さんで食べるものと変わらない風味でおいしい!これ以外の感想を言えず、食レポとしてはダメですが、ほんとにお店でプラントベースと言わずに出されても分からないと思います。
うどんはラーメンと比べるとまだすっきりしたダシ(スープ)なので、植物性でもあまり違いがないのかとも思いましたが、さすがにとんこつラーメンで、豚骨を使わず、植物性のみで、とんこつスープ特有の風味やこってり感が出せるとは驚きです。プラントベースラーメンと聞くと、ヘルシーだけれども、何かあっさりしてパンチがないものを想像していたのですが、完全に裏切られました。
とんこつスープには、MIRA-Dashi® C800 白湯風のダシタイプが使用されています。残念ながら、チャーシューは載っていませんでしたが、ラーメン屋さんで出されるようなおいしいとんこつラーメンでした。
ちなみに、このダシ製品を使ったとんこつラーメンを、一風堂さんの一部店舗限定で食べられるそうです。(参照:一風堂HP News)
次は、みそラーメンです。今度は、お肉みたいなものが入っているのが見えます。
食べてみると、まさに肉味噌入りのみそラーメン。みそラーメンは、お店によって様々ですが、これもお店で出てくるものと変わらない、肉感たっぷりのラーメンでした。それにもかかわらず、動物性の食材は使っていないとのこと。
スープには、とんこつラーメンと同じMIRA-Dashi® C800とC200 畜肉煮込みダシタイプを使用し、もやしをいためたような風味を出しています。肉のようなものは、MIRA-Dashi® C100という大豆ペプチドを含むダシタイプから作られているそうです。ダシの味がしっかり染みているためか、大豆ミートっぽさは感じられませんでした。
プラントベースビーフシチューとカレー
試食ももう終わりかと思っていたら、最後にガツンと来ました!
お昼ご飯は食べないできてください、と言われていた意味がよく分かりました…
小皿ではありますが、植物性の材料で作ったプラントベースビーフシチュー&カレーライスです。またしても同じ感想になってしまいますが、シチューは、デミグラスソース風の普通のビーフシチューの味。カレーは、コクとまろやかさのある普通の欧風ビーフまたはポークカレーといったところ。中に入っているお肉は、大豆ミートとのことです。さすがに、牛肉と同じレベルとまではいきませんが、大豆っぽさを感じさせず、言われなければ普通のカレーのお肉と思ってしまいます。こちらも、先ほどのみそラーメンと同じMIRA-Dashi® C200畜肉煮込みダシタイプを使用しているとのことでした。
改めて感じる「ダシ」の重要性
軽い試食と思っていたら、それぞれ一皿の料理として出していただいたので、しっかりと味わうことができました。全部とてもおいしく完食させていただきました。おかげでおなかいっぱいになりましたが(笑)
最近は、プラントベースフードの試食を行う機会も増えてきましたが、ほぼ一口の試食だけなので、実際の料理として食べた時にどう思うのかまでは感じられていませんでした。
今回ご用意いただいた料理は、全て植物性の材料で作られているとのことでしたが、正直な感想として、言われなければ全く分かりませんでした。普段は、プラントベースと言っても、大豆ミートやミルク系のものが中心で、「ダシ」はあまり見かけることがありませんでした。家庭で調理する場合は、顆粒だしやスープの素、カレーのルーなどを使用することも多く、それらが、動物性の原料から作られていることを意識していないことも多いでしょう。ただ、料理の決め手はダシとも言われること多く、料理全体のおいしさを左右するほど重要なものです。そのダシを植物性の原材料だけで作ると、なんとなく物足りない料理になってしまい、それがおいしさを充分に感じられない要因の一つになっているようです。
今回は、その課題にチャレンジし、「満足感」を得られるプラントベースフードの開発に取り組む不二製油さんのレポートでした。試食した料理はすべてプラントベースのイメージを越えておいしかったです!ダシ製品を作るだけでなく、それをおいしい料理にして提供したい、という不二製油の皆さんの情熱が伝わってくる試食でした。
まだまだ一般家庭で、気軽に植物性のダシを使える状況にはなっていませんので、今後の研究開発や商品化を期待したいところです。
取材日 2023/11/27
取材協力、資料提供/不二製油株式会社