以前の記事でご紹介したイベントSlushのマッチングプラットフォームにて知り合い、お会いすることができたフィンランドの会社”Helsieni“のサステナブルなビジネスについて今回は紹介します✍️
Helsieniは都心に自社農場を持っており、地元のレストランから回収したコーヒーかすを活用し、キノコを栽培し、栽培したキノコを地元のレストランで提供するという資源循環型のフードシステムの実現を目指しています。また、そのほかにもHelsieniは、同じように家庭で出たコーヒーかすを使って、キノコを育てる栽培キットの開発・販売を行っています。そしてなんと、同社はフィンランドだけでなく、日本にも進出し、マーケットを拡大中です!
なぜコーヒーかすを使ってキノコを育てるのか、このビジネスによってどのような環境への効果があるのか、また、なぜ日本に進出したのか、などさまざまな点について紹介します。
(参考 Helsieni 日本語サイト)
コーヒーかすを使ってどのようにキノコを育てるのか
フィンランドの首都ヘルシンキ”Helsinki”を拠点に、キノコ”sieni”(フィンランド語でキノコの意)を資源循環型の方法で栽培するノウハウを広めている会社”Helsieni”。”Helsieni”は多くの人が「ゴミ」と呼ぶもの(使用済みのコーヒーかす、農業副産物など)を使ってキノコを育てる栽培キットを開発しました。
栽培方法はいたって簡単です!
1.混ぜる
栽培キットの容器と蓋を消毒したら、容器の中にキットの菌糸(キノコの種のようなもの)が入った袋と、使ったばかりのコーヒーかすを入れます。そして蓋を閉めます。蓋や容器の側面には穴が空いてあり、その穴からキノコが出てきます。ただ、十分な湿度を確保するため、穴はテープ(キノコの呼吸を妨げないもの)でふさいでおきます。
2.追加する
菌糸が成長し、コーヒーかすが白い菌糸体に覆われたら、新しいコーヒーかすを追加します。そしてこの栽培キットが満杯になるまで、この作業を繰り返します。
3.収穫する
キノコがテープを突き破り、穴から出てきたら、4〜7日間は頻繁にキノコにミストを吹きかけます。
(参考 Helsieniサイト / YouTube:Starting a mushroom farm in 2 minutes)
日常の一コマからはじまるサステナブルな社会づくり
Helsieniは大きな工場を建てることはしません。Helsieniは誰もが家で“コーヒーかすという日常の一コマ”からキノコを生産する効率的で素朴な方法を学び、誰もが資源循環型社会への小さな貢献をできるようになることを目指しています。
このキノコ栽培キットにおいてキノコの餌としてコーヒーかすを使っている背景は、コーヒーかすがキノコの栽培に効果的なことに加えて、“フィンランド人のコーヒー愛”も一つの大きな理由です。フィンランドは一人当たりのコーヒー消費量が世界1位の国として知られており、コーヒーは多くのフィンランド人にとって大事な日常生活の一部です。そんなフィンランド人が毎日「ゴミ」として出すコーヒーかすの量も計り知れないほどでしょう。そのコーヒーかすを再利用し、美味しいキノコ(キノコは、フィンランド文化・フィンランド料理にとって欠かせない大事な食べモノです!)を作ることができたら、それはとても素敵なことではないでしょうか?
そしてこの栽培キットの栽培用容器はUnicafe(フィンランドの大学の学食)や、Arkea(職場や学校の給食提供会社)が使用している容器(使用済み)をリサイクルして作られています。
既にあるもの、かつ、元々はゴミになっていたものに新たな活用方法を与えて再利用することで、更に無駄のない資源循環型の栽培に近づけています。
なぜ日本に進出するのか
Helsieniはプロジェクト“ヘルシンキノコ”として、2023年から日本の消費者向けの販売を行っています。「なぜ日本に進出したのか?」その背景には日本人の昔からの根強い“キノコ愛”が強く関係しています。
フィンランド人も、日本人も、“キノコ好き”という共通点があります。フィンランド人は秋になったら森にキノコ狩りに出かけます。市場には様々な種類のキノコが並び、キノコスープなどキノコ料理を楽しんだり、本屋には多くの種類のキノコ図鑑が並んでいたり、とキノコはフィンランドの文化にとって大事な一つの要素です。
そして日本人も世界的に見ると、キノコ好きな民族として知られているとのこと。確かに、身近なキノコだけでも、私たち日本人はシイタケ、ナメコ、エリンギ、舞茸、しめじ、マッシュルーム、、、など多くの種類のキノコを様々な方法で調理し楽しんでいます。そして日本特有の伝統的なキノコ栽培方法、ノウハウは時を超えて受け継がれてきています。キノコを愛する日本において、伝統的なキノコの栽培方法に“フィンランド流アレンジ”を加え、両国ともにサステナブルな未来を作ることが出来たら素敵なことですよね。そんな願いと想いからHelsieniは日本を一つのマーケットとしてプロジェクトを開始しました。
そして現在は、ヘルシンキで地元の学食や給食提供会社から使用済みコンテナ―を回収し、再利用しているように、東京でも再活用出来る未利用資源を提供するローカルなステークホルダーの開拓に取組み、よりローカルかつサステナブルなキノコ栽培方法の普及の実現を目指しているとのことです。
(参照 日本での取り組みの詳細)
古くから根付いている文化とともにサステナブル消費
今回紹介した、昔からフィンランド人に愛されるキノコとコーヒーを掛け合わせることで生まれたHelsieniのクリエイティブなキノコ栽培のアイディアのように、古くから根付いている文化にこそ、新たなサステナブル消費の文化が生まれるヒントが潜んでいるかもしれませんね。そんな視点で私たちの日本文化に目を向けてみると、私たちの生活もよりサステナブルなものに変えることができるのではないでしょうか、、??
文・構成・写真/SD学生編集部(M.M 在フィンランド)