代替肉とは、大豆や藻類など植物性原料から作られた“お肉のような食べ物”(植物肉)や牛などの家畜から抽出した細胞を培養し得られるお肉(培養肉)のことを言います。培養肉はまだまだ研究途中ですが、植物肉は街中でもよく見かけるようになりましたし、最近のフードテックの進歩は目まぐるしく、お肉の食感や味わいの再現度もかなり高くなってきていますね。
また、代替肉は環境負荷が小さいサステナブルフードとして近年注目を集めており、“環境面を配慮した食事を好む方の増加”を受け、代替肉市場は近年急速に拡大しています。
さて、環境負荷の少ないサステナブルフードとして注目を集めている“代替肉“ですが、代替肉を食事に取り入れることで、どのような環境へのメリットが得られるのでしょうか?
家畜に比べ格段に小さい環境負荷でタンパク質源を供給できる
家畜の飼育には膨大な飼料、水、土地が必要であり、その環境負荷の大きさが近年問題視されています。畜肉1kgの生産に必要な穀物(大豆やとうもろこしなど)の量は牛肉で11kg、豚肉で6kg、鶏肉で4kg必要だとされ、その飼料を育てるには、それぞれ20.7t、5.9t、4.7tの水が必要になります。そして、その膨大な飼料を確保するべく、広大な耕地が必要となっています。
大豆やとうもろこしなど植物性原料を育てるのに比べて、いかに畜産業は環境コストが高い農業かわかりますね、、。
加えて、畜産業による温室効果ガスの排出量の多さも問題視されています。牛のゲップとしてメタンガスが排出されてしまうことなどにより、家畜飼育には膨大な温室効果ガスの排出が伴います。実際に、その排出量は温室効果ガス総排出量の14.5%を占めており、畜産は地球温暖化の一因にもなってしまっています。
このような事実を背景に、畜産に比べ格段に少ない水や土地だけで一定量を確保し、畜産由来の温室効果ガス排出を軽減できる、植物性原料をもとにした“代替肉”が近年注目を浴びているのです。
(参照:「代替⾁の開発と今後の展開―植物⾁と培養⾁を中⼼に―」遠藤真弘)
代替肉を取り扱う企業は次々と台頭してきていますが、今回はその中でも『世界の代替肉市場を牽引するアメリカ発のスタートアップ企業』を2社紹介していきます!
ビヨンドミート
地球にも環境にも自分達にもやさしい、動物性のお肉を“越える”植物性のお肉“ビヨンドミート”をつくりたい、その想いから2009年に設立されました。
ビヨンドミートの環境への影響
ビヨンドミートは環境負荷がとても小さいサステナブルミートです。ビヨンドミートの看板商品である“ビヨンドバーガー(ハンバーガー用パティ)”と従来の牛肉使用のハンバーガー用パティでその生産にかかる環境コストを比べてみましょう。
ミシガン大学との共同研究によると、ビヨンドバーガーは従来のハンバーガー用パティに比べ、使用する水を99%、土地面積は93%、エネルギーは46%、排出する温室効果ガスは90%削減できるとのことです。
日本でも販売開始
アメリカをはじめとする欧米の国々ではビヨンドミートの製品はスーパーマーケットで販売されたり、ハンバーガー店でヴィーガンオプションとしてビヨンドバーガーを使用したハンバーガーが販売されたり、様々なところで見かけられるようです。
そして、2022年11月から、日本でもビヨンドミートの販売が開始されたとのことです!カスミやマルエツ、マックスバリュなど関東10店舗でビヨンドビーフ(冷凍)などの製品が先行販売され、ゆくゆくは販売店舗の拡大、外食チェーンでの販売も目指されているとのことです。
(参照:「植物肉“ビヨンドミート”、カスミ・マルエツ・マックスバリュ関東で販売開始、「ビヨンドビーフ」とベーカリー・デリカ商品/USMH」、大豆油糧日報、2022/10/19)
関東にお住まいの方はぜひお近くのスーパーマーケットで探してみてくださいね。
インポッシブルフーズ
工業畜産の環境への悪影響の軽減、動物不使用の食品のさらなる普及を目指し、スタンフォード大学のパトリック・ブラウン教授によって、2011年に設立されました。
インポッシブルフーズの代替肉の環境への影響
インポッシブルフーズの代替肉もまた、普通のお肉に比べ、生産時の環境コストは非常に小さいです。同社のハンバーガー用パティ“インポッシブルバーガー”であれば、使用する水は92%、土地面積は96%、排出する温室効果ガスは91%削減することができます。(参照:Impossible Burger Patties)
また、お肉のジューシーさを再現するべく、健康に良いココナッツオイルを使っていることから、“ヘルシー×サステナブルミート”として人気を集めています。
代替ミルクも開発
同社はプラントベースミートだけでなく、大豆をベースとする植物性の代替ミルク“インポッシブルミルク”の開発も進めているようです。
従来の豆乳であれば、ホットコーヒーに入れても混ざらないことが多いですが、インポッシブルミルクであれば固まることなくホットコーヒーとも混じり合うとのこと。(参照:Impossible milk could be coming to your cereal bowl, CNN Business)
(下図の左が豆乳×ホットコーヒー、右がインポッシブルミルク×ホットコーヒー。インポッシブルミルクは2層に分離せず、コーヒーにしっかり混ざっている)
まさに、インポッシブルをポッシブルにする、そんな新しい植物性の代替ミルクが私たちの食卓に並ぶ日もそう遠くないかもしれませんね。
これから考えていきたいお肉の未来
今回ご紹介したビヨンドミートとインポッシブルフーズの2社だけでなく、代替肉ビジネスに取り組むスタートアップ企業は世界中に数多くあります。
日本でも大豆ミートをはじめとする、さまざまな代替肉の開発が多くの企業によって行われており、街中でも代替肉を見かけることが多くなってきましたね。今はまだ“新しい”食の選択肢という印象が強いですが、将来的には“いつもの”食の選択肢になっているのでしょうか。100年後も美味しい“お肉”を食べていられるように、今から少しずつでも、新しいお肉を取り入れてみませんか?
文・構成/SD学生編集部(M.M)